【竹富-石垣2005】

今年の夏休みでは、なかなか得難い体験をした。
計画では、今年の夏は主に竹富島で過ごすつもりだった。
友達の映画プロデューサーHが、撮影中を過ごした竹富の民宿が凄くよかったと紹介してくれたのだ。
その宿はマスコミ御用達みたいなとこもあって、飯にはうるさい人たちがみんな褒めていたそうだ。
撮影中にも、スタッフはもちろん女優もわざわざここにご飯を食べにきていたくらいだ。
プロデューサーHの知り合いのコックは、わざわざオバアに料理を教わるために
ここに泊まり込みできていたほどだそうだ。
それはちょっと期待してもよさそうだ。
ぼくはそこに5泊することにした。
その後で石垣島のホテルに移って、20年ぶりの石垣の町を毎日歩こうと思っていたのだ。
でも、結局、竹富には2泊しかしなかった。
宿があまりにも酷すぎたのだ。
母屋は確かになかなかよさそうなとこだったのだ。
でも、ぼくらが押し込められたのは、集落の外れにある、
「新館」という名の物置を改装して作ったまるで飯場みたいな四畳半だった。
ここは、5月に作ったばかりらしい。
シーツも替えてないような猛烈な西陽の当たる部屋。
午後はカーテンを開けると地獄の暑さだから、閉め切るしかなくて外の景色も見えない。
部屋には、テレビ1台ない、机ひとつない、座布団1枚すらない。
ただ四畳半の部屋だけだ。
エアコンはついているが、1時間100円の料金制だ。
朝と夕方に母屋に呼ばれて食事の席につくと、驚くほど粗末な食事。
プロデューサーHが激褒めしていたオバアが作った食事は、どこにもない。
いや、第一オバアは食事なんか作ってもいない。
庭に水撒いてるだけだ。
評判の料理は、いったいどこに。
2日目の朝飯をお見せしよう。


原価は、15円くらいか、20円くらいはかかってるか。
3ヶ月ほど前には確かに最高の宿だったはずなのに、今ではこれだ。
最初はその宿の飯が酷いという話を信用しなかったプロデューサーHに写真を見せたら、
>んんん、これは凄い
>千葉あたりの学生民宿より酷いですね
とさすがに愕然としていたが、ほんとにそうだ。
コックがわざわざ勉強にくるような飯では、とてもないのだ。

さて、では、最高の宿は、なぜ突然最低の宿になってしまったのか。
せっかく今まで築いてきた評判をドブに捨てるようなまねをしたのか。
どうも、新館を作った時点で、金儲けに走ることにしたようなんだよなー。
物置を客室に作り替えてここに客を押し込み、金をかけない飯を出せば儲かる、と思ってしまったようなんだよなー。
わけあって家族が増えてしまったので、それがきっかけかもしれない。
台所を見ていると、オバアはもちろん台所にはいなくて、新しく増えた家族が仕切っているようにも見える。
もしかすると、もう代替わりして、あの新しい家族があの宿を仕切っているのかもしれない。
なんにしろ、愚かなことをしたものだ。
今までだって客を大事に扱って美味しい食事を出して、それで充分儲かっていたはずなのに。
目先の収益は急激によくなったかもしれないが、きっとあの宿は口コミで客を激減させるだろう。
5泊する予定だったぼくらは、2泊でそこを出た。
プロデューサーHの顔を立てて、理由はぼくの個人的なことにしておいた。
ぼくらは予定を早めて石垣島に出て、それからのんびりとゆったりと、南の島の夏休みを満喫したのだった。
なかなか面白い体験だった。
竹富島も、観光客がハイシーズンには多すぎることを除けば、美しくていいとこだったし。
ただまあ、ぼくが松竹荘に泊まることは、一生ないけどね。


シーズン中の竹富島は、あまりいくところじゃない
島民の何倍も観光客がいるってのは、やっぱり異様な状況だ
でも、コンドイ浜には、猫がいる


海猫だ
観光客の飯を貰って、野良がたくさん生活している
海にいる猫って、初めて見た
それがちょっとよかった



なんだかシュールな光景だなあ



【石垣編】
南の島は、命が濃い
どのくらい濃いかというと、溢れた命が凝り固まって瘤になるくらい



空は、蒼い
白い雲を背負って蒼い


ガジュマルは根を張り



溶樹というくらいで解け合って渾然一体となる



帰りの飛行機から富士が見えた